帰経とは
帰経とは生薬が臓腑や経路、部位に選択的に作用することをいいます。
この帰経を知ることで標的をきちんと狙うことが出来るようになり、
幹部に薬効を届けることが出来るためとても重要な要素となります。
この役割は西洋薬学のドラッグデリバリーシステムと似ている作用を持っている特徴があります。
一部の生薬には「引経薬」という特別な働きを持っているものも多いです。
この引経薬は、処方中の生薬の薬効をまとめて一緒に経路を通してある特定の部位に運んでいくことが出来る役割を持ちます。
「四物湯」など血を補う方剤など、引経薬として明目の効能がある「菊花」をあわせていきます。
そうすると四物湯の薬効が肝の帰経に引っ張られていく効果があるので、
虚血による疲れ目やドライアイなどの症状により一層高い効果を得ることが出来るようにになるのです。
このように帰経は生薬や商材が身体のどの部分に影響があるかを示す役割を持っており、
東洋医学で人間の内蔵全体を表す言葉として「五臓六腑」を利用していますが、
この五臓とは「肝・心・脾・肺・腎」を指します。臓器の動きにとどまらずに精神的な要素も含まれていますが、
この五臓に対して薬効があらわれる部位を指す際に使用されるのです。
実際に使用されている生薬としてこの帰経が使用される例としては、
桔梗・款冬花は咳嗽や呼吸困難など肺の病変に有効なため、そこで肺経に帰すというように言葉が使用されます。
他にも天麻や全蝎、羚羊角は手足抽搐など肝経の病変に効能があるといわれているので肝経に帰すとなるように、
帰経とは薬物の効能を総合して利用されているのです。
生薬によっては一つの薬物が複数の帰経を持つことも多く、
その薬物の治療範囲が広いことを示す場合があります。
黄連の帰経に対しては心や肝、胆や脾、胃や大腸で広く六経の熱証に対し用いられている特徴を持つなど、
生薬によって効能のある範囲が大きく異なってくる特徴があります。